トトちゃんのお父さん

ケーキ

1年前の夏に、トトちゃんがお家を脱走しました。

トトちゃんというのは、近所の家から脱走したキジトラくんです。

夏のある夜、家でご飯を食べていると、庭先から男性の声が聞こえてきました。

「すみませんー、ちょっと、お尋ねしますー」

「うわっ、びっくりしたー」

「あ、すみませんー そこの外の奥にいるキジトラの猫、うちの脱走した猫じゃないかと・・・」

「えー、あれはうちのノンちゃんですよ」

「そうですかー? いや、あれはうちのトトに似てるなあ、もうちょっと奥まで入って見ていいですかー?」

「いいですけど・・・あれはノンちゃんですけどね」

 

ノン
おれはノンだ。トトじゃねー

 

 

それから、何度か、トトちゃんのお父さんは、うちのノンちゃんをトトではないかと、

疑いながら現れました。

その度に、わたしは少しイラつきを覚えたのもつかの間、

長崎のカステラをいただいてからというもの、すっかり気をよくして、

トトちゃん探しに前向きになったものでした。

トトちゃんのお父さんは、猫探しのチラシを作って、トトちゃんの写真を丁寧にパウチっこをして、近所の電信柱に貼りつけてました。

目撃情報があると、情報をくれた猫おばさんたちに何度も会いに行き、いろいろな人たちと、その調子で交流していきました。

そして、自分で捕獲器を買って、トトちゃんらしい猫がいるという情報が入ると、

設置して捕獲を試みましたが、どれもキジトラ違いで、トトちゃんは見つかりませんでした。

そうして、数ヶ月経ち、あるキジトラを捕獲したところで、もうトトちゃんはあきらめて、代わりにその捕獲した猫を飼うことにしたそうです。

それを聞いて、なんだか残念だなあと思っていたら、

飼ってるうちに、この猫はトトかも?と、気がついて、そこで、無事にトトちゃんはお家に帰れたということになりました。

そんなことある?って、わたしも近所の猫おばさんたちと驚愕しましたが、かなり笑えました。

トトちゃんのお父さんは、トトちゃん探しのおかげで、近所の猫好きな人たちとたくさん知り合えて、とても喜んでました。

 

そんなトトちゃんのお父さんは、市の猫ボラのセミナーに来てくれました。

去年には、1号と3人で食事にでかけました。

 

以前から病気を患っているのは知ってたのですが、トトちゃんのお父さんが、先月、亡くなったと聞いて、

一緒に行ったレストランに行って「トトちゃんのお父さんを偲ぶ会」をしてきました。

ケーキを食べてきました。

 

生前にその捕獲器をもらったので、トト号と名付けて、ボランティア活動に使っていこうと思います。

 

 

(タマル2号)